それでも君と、はじめての恋を
「……帰った?」
教室に戻り、葵の言葉に諦めの溜め息を吐いた。
「逃げ足だけは速いのが純だからね」
なぜなら女の子の怒りを買って逃げ回るのが日常だから。本当にカス。むしろゴミにして燃やして捨ててやりたいね!
「今日は3人の女の子と約束あるみたいなこと言ってたかも」
その内本当に刺されるんじゃないの? むしろ刺してやりたいくらいだよね! シャーペンの芯で手の甲をプスッと。
「……今度やってみようかな」
隣の席だしチャンスはいくらでもある。
「なんか言った?」
「なんでもない」
そう返しながらふと葵の携帯を見ると、着信ランプがピンクに光っていた。
「……葵、もしかして今日デート?」
「ん? うん」
マジでか!
デートと聞いてあたしの頭の中から純への怒りが消える。代わりにちょっと、寂しさが募ったけれど。
「じゃあ、あたし1人かぁ~。何やらされるんだろ」
「手伝うよ。何時から会うとか決めてなかったし」
葵は彼氏とメールのやり取りをしていた携帯を閉じて、あたしは「何言ってんの」と返す。