それでも君と、はじめての恋を
「絶対起きて待っててくれたんだから早く行きなよ!」
「や、お昼には帰れると思うって話してただけで……」
「いいから! 安部ちゃんには適当に言っとくからっ」
葵の大学生の彼氏、七尋(ななえ)くんは今日で冬休みが終わって、1、2週間もすれば試験期間に入ってしまうはず。
いつだって七尋くんはできるだけ会おうとしてくれるけど、普段もレポートやバイトやらで忙しい人だから、今日はすぐに行かなきゃダメでしょう!
「ほら、早く! 貴重な時間がもったいない!」
机の横に掛けてあったカバンを取って差し出すと、葵は少し悩んでからカバンを受け取って席を立った。
「ありがと。渉に彼氏ができた時に、埋め合わせする」
「うん! 楽しんでっ。明日ちゃんと話聞かせてね!」
葵はクスリと笑って、教室を出て行く。あたしは振っていた手を膝に置いてから安堵の息を吐いた。
葵は変なとこ気にしいだから、今まで何度こうやって無理矢理行かせたか分からない。
普段忙しい人とは、会える時に会わなきゃね。というより、その話を早く聞きたい。
デートかぁ……学校終わった後にデートとか羨ましいな――って、あたし最近そればっか。
「行くかー……」
純は、明日マジで殴るか刺す。
そう思いつつ、教室に残っていたクラスメイトと挨拶を交わしてから資料室へ向かった。