それでも君と、はじめての恋を
「これは1回使ってみた方がいいよ! ね、葵っ」
「うん。その会社付けまも出してて、接着剤も一緒だし最初そっち試してみたら?」
「へー! じゃあ今日買いに行こうかなーっ」
化粧品の話で盛り上がってると、予鈴が響き渡る。
会話を続けながら少し蒸し暑い更衣室を出ると、窓が開いてるせいか体育館は涼しかった。
「渉、自販機寄りたい」
「あ、あたしも!」
離れにある体育館から校舎へ続く渡り廊下のちょうど真ん中に、食堂と自販機がある。
「そういや渉、もーすぐ2ヵ月でしょ。桃井と付き合って」
「あー……うん、まぁ」
そうなんだけど……。
言葉を濁したあたしを不思議に思ったんだろうけど、その前に葵は前方にいた人影に「あ」と声を漏らした。
「お。葵に渉じゃぁ〜ん! 体育おつかれぇ」
食堂から出てきたのは純とモモで、ふたりの手にはペットボトルが持たれている。
「アンッタ……ちゃんと制服着なよ、ダラしない」
「葵ってばどこ見てんの! エッチ!」
「気持ち悪いから肌見せんな」
「鬼ごっこして暑いんですぅ〜!」
男子は校庭で体力測定だったはずなのに、何やってるんだか。
ワイシャツを第3ボタンまで開けたままの純に、呆れた視線を送る葵。あたしはというと、盗み見たはずのモモにくぎ付け。