それでも君と、はじめての恋を
「特に何もないだろうなーって」
2階へ上がる階段に足を乗せたところで口を開くと、何だか妙に虚しくなった。
バレンタインに付き合い始めたから、記念日は毎月14日。
1ヵ月記念日は、正直まだ浮かれ過ぎていた時期だから特に何もしなかったし、過ぎてから気付いてひとりで喜んでいただけ。
だからもうすぐ2ヵ月だってことは意識していて、喜びも幸せもあるけど……。
「まー……桃井が記念日うんぬんを気に掛けてるかって言われると……考えてなさそうだね」
「でしょ? あたしもそう思ってるの」
毎月、記念日を盛大に祝いたいわけじゃない。
それこそ半年とか、1年記念日の方がイベント的には大きいと思ってる。
毎月特別なことをするほど、学生の自分にお金の余裕なんてないわけで。だからって何もないのはちょっと寂しい。
じゃあ何がしたいんだって聞かれると……それもまた困る。
「欲しい物があるわけでもないしなあ……」
2階へ上がって教室の前まで辿り着くと、すでに自分の席に座ってるモモが目に入った。
「まあ、デートするくらいでいいんじゃない?」
「……そんなもん?」
「渉が他の子に言ってたことでしょ」
ああ、言ったかも。
人の記念日には、アレすればコレすれば?って簡単に言えるのに。自分のことになるとそんなんでいいの?って思っちゃうあたり、あたしって本当に恋愛経験値ゼロだな……。
いや、5くらいにはなってると思いたいよね。何が基準なんて分からないけど、まだまだだってことくらいは重々承知デス。