それでも君と、はじめての恋を


「特に何もないだろうなーって」


2階へ上がる階段に足を乗せたところで口を開くと、何だか妙に虚しくなった。


バレンタインに付き合い始めたから、記念日は毎月14日。


1ヵ月記念日は、正直まだ浮かれ過ぎていた時期だから特に何もしなかったし、過ぎてから気付いてひとりで喜んでいただけ。


だからもうすぐ2ヵ月だってことは意識していて、喜びも幸せもあるけど……。


「まー……桃井が記念日うんぬんを気に掛けてるかって言われると……考えてなさそうだね」

「でしょ? あたしもそう思ってるの」


毎月、記念日を盛大に祝いたいわけじゃない。


それこそ半年とか、1年記念日の方がイベント的には大きいと思ってる。

毎月特別なことをするほど、学生の自分にお金の余裕なんてないわけで。だからって何もないのはちょっと寂しい。


じゃあ何がしたいんだって聞かれると……それもまた困る。


「欲しい物があるわけでもないしなあ……」


2階へ上がって教室の前まで辿り着くと、すでに自分の席に座ってるモモが目に入った。


「まあ、デートするくらいでいいんじゃない?」

「……そんなもん?」

「渉が他の子に言ってたことでしょ」

ああ、言ったかも。


人の記念日には、アレすればコレすれば?って簡単に言えるのに。自分のことになるとそんなんでいいの?って思っちゃうあたり、あたしって本当に恋愛経験値ゼロだな……。


いや、5くらいにはなってると思いたいよね。何が基準なんて分からないけど、まだまだだってことくらいは重々承知デス。
< 202 / 490 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop