それでも君と、はじめての恋を
ハァ、と短い溜め息を吐いてから自分の席に向かい、椅子に腰掛ける。そのまま窓に背を預けて、隣に座るモモを見つめた。
同じように後ろに座った葵の机に頬杖をついてジーッと視線を向けると、それに気付くモモの表情。流れるように鋭い目つきがあたしに向けられて、ほんの少し、和らぐ。
何も言わないとすぐ逸らされるんだけどね。
「モモッ」
名前を呼ぶとピクリと体を揺らして、再びモモはあたしと目を合わせる。1、2、3、4、5、6――6.5秒が限界みたい。
これでも進歩したの。前は4秒だったから。一度逸らしてリセットすれば、また目を合わせられることも知ってる。
「モモ」
「……何」
「何でもない」
「……」
何ソレって言ってるのが表情で分かるけど、ちょっと意地悪したかっただけとは言わない。
本鈴が鳴ると同時に先生が教室に入ってきて、モモとのやり取りはそこで途切れた。
――もうすぐで2ヵ月だねって言うのと、今日で2ヵ月だねって言うのは、どっちの方がいいんだろう。
どっちにしても、あたしがそんなことを言ったらモモは何て返してくるんだろう。そう考えたら、特に返してほしい言葉がなかったことに気付く。
ただ、笑ってくれるといいなって。そう、思った。