それでも君と、はじめての恋を
「ていうか一緒に帰ったっていいじゃん……!」
葵があたしの手に折り紙を戻して、危うくグシャッと握り潰すところだった。
「桃井は白か黒かなんだねぇ~。俺みたいに放課後は女の子たちとのデートで忙しくないなんて、かわいそうに」
その女の子たちが結果鬼のような形相になって追いかけてくるなんて、かわいそうに。
純に心の中で合掌していると、葵があたしの顔を覗く。
「まあ、一応貰っといたら?」
「……うん。でもあたし、まだ逢ったことないんだよね」
モモの妹は小学1年生で、何か習い事をしてるって言ってたから多分それの送り迎えだろうなとは思う。
でもそれって真っ直ぐ家に帰ればいいだけの話じゃないの? いや、今までも何度かあったけど、最近なかったのに!
あたしが置いてかれる意味って……。
これは早いとこ妹さんと逢うしかない。それで一緒に送り迎え出来るようになれば万事オッケーじゃない? 仲良くなってお姉ちゃんとか呼ばれちゃったりして!
そのままモモの親御さんにも……あ、それはもう少し先でいい。ちょっとまだ心の準備が出来てないから。
「はぁ……。ただ手ぇ繋いで一緒に帰りたいだけなんだけどなぁ……」
いつだったか、恋がしたいと呟いたあたしに向けられたふたりの視線が、あの時と同じ。