それでも君と、はじめての恋を


「……別にいい」


そ、そうですか……。
怖いんですけど、無表情……。

てか、伝言ってなんだ。職員室にいるでしょ普通……。


その考えにハッとして、立ち去ろうとした桃井くんを呼び止めようとしたあたしは、勢い良く立ち上がった。


「あの! 多分職員室にっ」


―――バシャッ!

カンッ!と床に落ちてそのままコロコロ……と転がっていく缶に、唖然とする。


それから、桃井くんのカーディガンにできたココアの染みを見て、体中の血の気が引いた。


ま、さか……立ちあがった時にあたしの手にぶつかった缶が、運悪く桃井くんに……?


もはや芸術的にも見えるココアの染みに、頭のてっぺんからつま先まで完全に固まってしまう。


桃井くんは染みをジッと見つめて、多分、怒ってる。ていうか、絶対怒ってる。


「ご、ごめん……なさい……」


静まりかえった空気に耐えられず口を開くも、反応はない。それどころか桃井くんを包むドス黒いオーラまで見えた気がした。


殺される。

マジで殺される!


なんでこんなことに!!
< 21 / 490 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop