それでも君と、はじめての恋を


―――……ああ。ダメだ。今日を振り返ってみても、なんの意味もなかった。


安部ちゃんがいればこんなことにならなかった! 純がサボらなきゃ、この空気はどうにかなった! 葵に手伝ってもらえば、失態を演じることもなかったかもしれないのに!


ていうか朝から1日やり直したい!


ぎゃー!っとパニックから頭を抱えそうになった瞬間、無言だった桃井くんが口を開いた。


「……別にいい」

「……」


それしか言葉知らないんですか……じゃなくて!


「よくないです! あの、今、クリーニング代を渡しますのでっ」


床に置いていたカバンをあさって、財布から急いで2千円取り出す。


「本当にごめんなさっ……え!?」


顔を上げると、桃井くんが教室を出ていた。


「ちょ、ちょっとちょっと! 桃井くん!!」


慌てて追いかけて、腕を引っ張る。振り向いた無表情の怖さに、すぐさま腕を離して2千円を差し出した。


「クリーニング代! 本っ当にごめんなさい!」

「……いいって」


よくないから言ってるんですけどぉぉおお!! あとでカツアゲされるのも怖いんだよ!! そんなこと口が裂けても言わないけど!
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