それでも君と、はじめての恋を
「痛いんだけど……」
ぎゅううううと精一杯力を込めてモモの手を握り締めると、不満そうな目と視線がぶつかる。
「反撃しただけだもん」
そう答えて力を緩めても、意味が分からないって顔をされた。
とんでもない力で引っ張られたのは最初だけだから、もういいんだけどさ。肩脱臼するかと思ったけど。
モモは喧嘩したら、本当に強いかもしれない。
ふたり並んで歩きながら、ギュ、と少し力を込めてモモの手を握る。
「……」
ギュ、と握っては緩めて、またギュっと握る。緩めると、今度はモモがギュってしてくれた。
モモが力を緩めれば、またあたしが握る。会話もしないで、目も合わせないで、その繰り返し。
ああヤバい。ギュってすると、ギュって返されるなんて。ニヤけちゃうに決まってる。
「へへ」
ニヤけた顔を隠すことなく笑顔を向けると、前を見てたモモが瞳にあたしを映した。
笑い声もない。言葉もない。
だけどモモの瞳が柔く細められて、口元に笑みを浮かべてくれるだけで、どうしようもなく嬉しくなる。好きで堪らないと思い知らされる。
「……ね。モモって冷え症?」
「多分」
男の人特有の骨ばった手。その4本の指を握り締めるあたしには、ひんやりとした温度ばかり伝わっていた。
「……冷たい?」
「……」
前方を見て聞いてきたモモの横顔を黙って見つめていると、数秒してモモがあたしに視線を移す。