それでも君と、はじめての恋を


「はー……」


モモが見えなくなって、再びソファーの背もたれに身を預ける。


することがなくて何となく自分の手に視線を落とすと、きっと多分モモがいるから浮かぶことを考えた。


ネイルを新しく塗り直そうかなとか、ハンドクリーム買おうかなとか。


それであたしは帰り道も家の中でも、モモのことを考えるんだろう。


もう家に着いたかなとか、湊ちゃんに手紙渡したかなとか……読んだかな、とか。


モモは、同じかな。あたしのこと考えたりするのかな。もしそうなら、めちゃくちゃ凄いことだと思う。


離れていても、同じ時間を共有していなくても、相手を考えてる瞬間があるなら、感動。


そうだといいなあ……。


記念日の今日、どこかに出掛けるわけでもお金をいっぱい使って盛大なことをしたわけでもない。

だけどここ数日のモモの心境や行動を知れて、ちゃんとピアスもあたしの手に渡って。好きだと言えて、手を繋いで一緒に帰れて。幸せ以外の言葉は当てはまらない。



ねえ、モモ。
あたしと全く同じ気持ちじゃなくてもいいから。


少しでも幸せを感じてくれていたら、嬉しいよ。



――『湊ちゃん、はじめまして。わたるです。お手紙ありがとう。

ちゃんとプレゼントもらえたよ。だからお兄ちゃんはダメな子じゃなくて、最高にステキで、すごくやさしいと思います。

じまんのお兄ちゃんだね。あたしも、だいすきです。』



5月も6月も7月も、これから先ずっと。思い出を重ねるように記念日も、繰り返せますように。


――――――
―――
< 235 / 490 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop