それでも君と、はじめての恋を

▽積もるたびに眩く



色々な決め事や検査が多い日々も落ち着いた4月末日。


進級してからやっと1日が授業と休み時間の繰り返しになってきた頃、昼前に登校したあたしは教室の中へ足を踏む込む。


「女子ってさぁ、持つ物いちいち可愛いよね~」


聞き慣れた声に視線を向けると、窓際1番後ろの席に座る葵とその前の席に座る純が話してるようだった。


「見てコレ。ガムでさえピンクって何って感じじゃなぁ~い?」


モモに話しかける純の手には、女の子らしいパッケージの粒ガムが持たれている。


「男からしたらクールミントとかにしてほしいよねぇ。ブレスは常に綺麗にしておきたいじゃん?」

「純ごときが何ブレスとか言ってんの。アンタの息なんてどうでもいいからあっち行って」

「えー……あ、渉だ~」


葵に鬱陶しがられて口を尖らせた純があたしに気付いたけれど、ヘラリと笑うわけでも手を上げるわけでもなかった。


いつもと違う純に、ああやっぱりなと思って歩み寄るとモモが顔を上げる。


「はよ」

「おはようモモ」


笑顔で挨拶を返してすぐ、あたしの席に座っていた純が大きな溜め息をついた。


「まぁた遅刻して~。昨日何してたの?」

「おにぃと夜通しDVD鑑賞してたんだけど、朝5時にギブアップして寝ちゃって、そのまま……」


カバンを机の横に掛けながら、チラリと葵の顔を見る。すると目が合って、あたしは小さく肩をすぼませた。
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