それでも君と、はじめての恋を
▽2千円の代わりに
「行くの、行かないの、どっちなの」
「行くよ!」
「じゃあ早く行きなよ」
次の日の休み時間、あたしは立ったり座ったり落ち着かない。見かねた葵が、教室のドアを開けた。
……あたしは昨日、桃井くんのカーディガンを汚したわけだけど。何もお詫びをしないわけにはいかないと思って、お詫びの品を渡しに桃井くんのクラスに行こうとしてる。
けど、やっぱほら、怖いじゃん! でも何もしないままってのも、怖いわけで!
「早く行かないと休み時間終わるよ」
「行ってきます……っ!」
ちょっと泣きそうになりながら、気合いを入れて1組に向かう。
あたしは7組だから、端と端なんだよなぁ……。
廊下ですれ違う友達に「何持ってんのー」とか「今度相談のってー」とか声を掛けられながら、曖昧に返事をして1組の前で立ち止まる。
……見事に1組には友達がいない自分を呪いたい。
バクバクと鳴り出した心臓を押さえつつ、後ろのドアから教室を覗いた。すぐに見つかるピンクブラウンの髪の毛は目立ってしょうがない。
やっぱひとりなんだ……。
それぞれのグループが一か所に集まって話してる中で、ひとりだけ窓際の席に座る桃井くんは、頬杖をついて窓の外を見ていた。