それでも君と、はじめての恋を
「お待たせー……って」
何やってんだか。
教室に戻るとすぐさま目に飛び込んできた、葵と純の取っ組み合い。
というか葵が純の両頬をつねったり引っ張ったりしてるだけなんだけど、逃げようとする純が椅子や机にぶつかって、ガタガタとした音を教室中に響かせていた。
「痛い~!!」
「うるっさい!」
「ああ助けて渉ぅ!」
後ろ歩きで逃げる純を追い詰める葵に、教室に残っているクラスメイトは笑ったり呆れたり。
「……いいの?」
「いいのいいの。どうせ純が何かしたんだよ」
純の救助申請を無視して自分の席に戻ると、今度は「助けて桃井~!!」と必死な声。何モモに助け求めてるんだアイツは。
それすら無視して椅子に座ると、モモは飲み物を机に置いてからチラリとあたしを見る。
「行ってらっしゃい」
そんな、助けてもいい?って目で見られちゃ送り出すしかないよね!
葵と純の元へ歩いていくモモの背中を見ながら、律儀というか優しいなぁと思う。
モモに気付いたのかふたりは騒ぐのをやめて、先に葵が席に戻ってきた。
「桃井が彼女の親友よりチャラ男の味方したんですけど」
「ははっ! ごめんって。あたしは葵の味方」
ムスッとしながら葵は自分の席に座って、あたしは飲み物を手渡す。
「で? 今度は何したの、純」
「怒ってないって言ってんのに、しつこくて」
「ああ……結局3回目のドタキャンは何が理由なの? またバイト? それともレポート?」
周りに森くんの姿が見えないのを確認しながら聞くと、葵は「サークル」と答えた。