それでも君と、はじめての恋を


「サークル? 七尋くん、入ってたっけ?」


あ、そういうことか。

言ってから気付き、葵は置き去りにされたままだったお弁当のふたを開ける。


「普段から忙しいのに、サークルまで入られちゃ更に会えなくなるじゃん」

「……だね」

「別に入るのはいいんだよ。そんな頻繁に活動してるわけじゃないっぽいし」


ふんふん、と頷いていると葵はあたしの背後を見てから急ぐように次の言葉を発した。


「ゴールデンウィークに行く予定だった旅行がダメになってさ。サークルの活動日と被ったから。しかも七尋が入ったの旅行サークル」

「…………マジで」


あんぐりと口を開けると、モモと純が席に戻ってくる。きっとふたりに聞かれたくなかったから葵は早口で告げたんだろうけど、正直それどころじゃない。


「怒りなよ!!」

っていうか怒っていいでしょうソレは! 大したことじゃないからって言ってたけど、大したことじゃん!


「有り得ない……あたしだったらマジで怒る……」


衝撃なのか驚愕なのか分からないけど、とにかく信じられないという顔をするあたしに葵は困ったように笑う。


「参加必須の新歓旅行なんだって。だから、最初は仕方ないって思ったんだけど……でも、もういいよ」

「良くない! だって旅行って! そんなの初めてじゃん!」


丸1日遊ぶのも稀なのに、あろうことか初めての旅行をドタキャンて! しかもサークルが理由って! 葵は旅行に行けないのに七尋くんは行くとか! 何ソレ泣きたい!
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