それでも君と、はじめての恋を


「ていうかそんなの関係なしに葵は普段から大人なんだから、たまには我儘言って困らせたって良いじゃん」

「……」


偉そうに言ったあたしに、ぱちりぱちりと瞬きを繰り返す葵の隣で純が笑った。


「桃井の彼女こわ~い」

「は!?」


そんなことないでしょ!と思いながらモモを見るあたしは間抜けというか、だけどそんなこと言われたら心配になる。


目が合ったモモはいつもと変わらず無表情で、それでもいいのに今は不安に駆られてしまった。


「え、ダメ!? でも葵いつも彼氏を立てる良き彼女なんだからたまには……!」


しどろもどろになりながら必死に伝えようとすると、急にモモが瞳を細めてドキリとする。あまりにも優しい目をするから、言葉が喉奥に引っ掛かって出てこない。


な、何だろうこれ……。何でこんな、恥ずかしい気持ちになるんだろう。


「あのさ、ホントもうあたしのことはいいから」


勢いを失くしていると、葵がそんなことを言って箸を持ち直した。


「ムカついてたのは本当だけど、でもそれだけじゃないっていうか……違うんだよね」

「……? 寂しいなら怒っていいし、言えばいいじゃんって話をしてるんだけど?」


何なら代わりに泥団子でも作って七尋くんの口に突っ込んだっていいくらいなのに。


分からなくて首を傾げると、葵は目を見張ってから可笑しそうに笑う。


「もうドタキャンはいいんだって、ホントに。渉と桃井が羨ましいなって思ってただけだから」

「は?」


何でそこであたしとモモが出てくるの?
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