それでも君と、はじめての恋を
「ドタキャンされたことより、先のこと考えて腹立ったっていうか。逢える回数減るだろうなとか、七尋は忙しいけど充実してるんだろうなとか、色々」
「……うん」
「聞けば知れるけど、実際は七尋がどんな大学生活送ってるのか見れないわけじゃん。まあそんなの付き合ってからずっとだし、今更だけどさ。そういうの結構さびしーなと思って」
話してくれる葵の声も表情も暗くはなくて、やっぱりあたしとは違うなぁと思う。
小学からの付き合いで、七尋くんと付き合う前のことも後のことも知ってるけど、葵はいつも変わらない。サバサバしてる方だし、たまに怖いけど優しくて、彼氏一筋。
「だから同じ学校で、クラスも一緒な渉と桃井がちょっと羨ましくなったって話」
それでもやっぱり女の子だから、寂しくなる時だってあるし誰かを羨むことだってある。
「そんないいもんじゃないよ!?」
再び葵に身を乗り出したあたしの隣から、モモの突き刺すような視線を感じた。
「だ、だって、留年しそうなほど遅刻魔とか頭悪いこととか絶対バレるじゃん! 授業中寝るにも気を使うし、メイクだってよれてたらどうしようとか常に気になるし! モモが隣にいちゃノロケるにも恥ずかしくて出来ないんだから!」
同じクラスは本当に嬉しいけど結構デメリットもあったりするんだってことを伝えたかったのに、葵と純は声をあげて笑いだす。
「な、何ソレ……くだんなっ!」
「ほら、渉は若葉マークの恋愛初心者だからさぁ~」
何で笑われなきゃいけないの!
同じクラスは嬉しすぎるし神様ありがとうとか思ったけど! でも違うじゃん! それとこれは別なのが乙女心ってやつだと思うんデス……!
意味が分からないままモモに視線を移すと、眉間にシワを寄せて鋭い瞳があたしを見ていた。