それでも君と、はじめての恋を
好きなら好きだけでいいのに。
ずっと幸せな気持ちでいられたらいいのに。
出来れば不安なんて感じたくないし、喧嘩だってしたくないけど、そうなったとしてもいいかと思うのは何でなんだろう。
葵や他の友達を見てきて、結局好きなんだろうなってことが伝わったからかもしれない。
結果別れてしまう子だっていたし、本当にボロボロで泣き続ける子もいたし、何もかもが好きだけで片付けられないことも知ってる。
いつかあたしもそんな時が来てしまうのかもしれない。
だけど今考えてもしょうがないことで、未然に防ぐ努力なんてきっとあたしには出来なくて。その場の勢いで突っ走ってしまうに決まってる。
今のあたしは、モモが好きという気持ちを大事にするしかない。
ずっと見失わずに、積もる分以上に。大切にしたいなって、思う。
「……おさまった?」
聞くとモモは口元に緩やかな弧を描いて、ワンクッション置いてから口を開いた。
「少し」
まだちょっと赤いのかな。ていうか、今日のモモは何だかいつもと違うのは気のせい?
「ね~もっかい笑ってみてよ」
「何で」
頬を引っ張ろうとする純の手を避けるモモは、やっぱり機嫌が良さそう。いつも通りの無愛想に戻ってるけど、雰囲気が優しい気がした。
何か、楽しいことしたい……気分。
「何ニヤけてんの」
「ニ、ニヤけてない……!」
葵に突っ込まれて、あたしは顔を見せないようにカバンからお弁当を取り出す。教室の時計を見れば、昼休みは残り10分もなかった。