それでも君と、はじめての恋を
「おお、いいね。俺的にバッチリ」
着替えてからもう一度おにぃの部屋に入ると、佐野くんがニヤリと笑う。
「髪アップにすれば? お兄ちゃん、巻き髪ロングは見飽きました!」
「えぇー……」
おにぃの意見は聞いてないっていうか、そんなこと言われちゃモモまで飽きたかなって気になるじゃん。
ああでも、2年生になってから初めての登校日。あたしがシュシュでハーフアップにした時、モモは気付いてくれた。可愛いって! あたしの勝手な脳内変換だけど。
「でも髪いじるの苦手……」
巻き髪歴はそりゃ長いから慣れてるけど、アップにしろって言われても残念なことになるのは目に見えてるよね。
「新鮮でいいじゃん。俺得意だよ。やってやろーか?」
「マジで!」
佐野くんの言葉に目を輝かせると、「コイツ本当にうまいよ」とおにぃのお墨付きなのでやってもらうことにした。
時刻は12時前。待ち合わせは1時半。12時50分には家を出れば十分間に合う。
モモは、どんな服を着るんだろう。待ち合わせ場所に着くのはあたしが先かな。モモが先かな。
「で? 今日はモモと何すんの?」
佐野くんに巻き髪をいじられながら、背後に座るおにぃの質問に笑顔で答える。
「林間学校に向けて買い物!」
「勝負下着!? それは葵と買いに行けよ!」
「何考えてんの!?」
驚きのあまり声を張り上げると、「渉にはまだ早いって」とあたしの何を知ってるのか佐野くんが吹き出した。失礼な。
「手ぇ繋いで買い物出来るだけでいいのっ!」
そう言って持ってきた鏡でメイクを確認してると、鏡の中でおにぃと佐野くんが笑っていた。
「「初々しいな~」」
早く、モモに逢いたい。