それでも君と、はじめての恋を
「朝からめちゃくちゃ悩んでこの格好なのに!」
何で落ちあってすぐこんなことになってるんだろう。ていうか何ポロッと悩んでたとか暴露しちゃってんのあたし!
ひとりで騒いでバカみた、い……。
手にひやりと冷たさを感じた瞬間、グン、と前に引かれて反射的に足を前に出す。
カツンとヒールの音が鼓膜と胸の奥を叩いて、体より前に出る腕の先を見れば急速に熱が込み上げた。
「モ、モモ……ッ」
速くも遅くもない歩調に、一歩後ろからついて行く。
手を繋いで誤魔化された気分。質問にも答えてくれないし、暴露したことに対して何の反応もない。
だけど呼んで少しだけ振り向いたモモの表情が、可愛くて。気恥しさから眉を寄せて口を噤むモモはいつも、あたしに極上の幸せを与えるから。
「今日、すっごい楽しみにしてた」
そんな気持ちがモモに伝わるだけでもいいかなって、思った。
「どこ行く?」
声を弾ませながらモモの手を握り返して、ふとあたしの茶色いパンプスとモモの黒いショートブーツを見つめる。
いつもは上靴かローファーだから、今日はホントにデートなんだと再確認。
あたし今、すっごいニヤケてるだろうなぁ……。
「そこ?」
「え? どこ?」
モモの視線を追うと、黄色い看板に黒い英字で書かれた看板を見つける。駅前にある大手の雑貨店だ。
「あ、そうだね。何でも揃いそうっ」
「何買うの」
「んーとね」と買い物リストを頭の中に思い浮かべながら、モモと手を繋いで雑貨店へ向かった。
5月の休日。天気良好。世の中でいうゴールデンウィークに、あたしとモモの初デート開始です。