それでも君と、はじめての恋を
「モ、モモッ! いいの? あたしほんとに写真は嫌ってわけじゃ……! ていうか何か買いに来たんじゃないの!?」
見るだけだったにしても、結局店長と話してばかりでまともに見て回れなかったのに。
「あー……うん」
うんだけじゃ分からないんですけど!
少し早足だった歩調は速度を落として、あたしはやっとモモの隣に並ぶ。
見上げるとモモは後ろを振り返って、同じようにすると店長が店の外に出ていた。
気付いた店長はヒラヒラと右手を揺らして、モモにならってあたしも軽く頭を下げる。
「え? え? ほんとに何だったの?」
再び歩き出したモモに尋ねても、無言。
「……店長と仲良しなの?」
「まあ、そこそこ」
返答を聞きながらエスカレータに乗ると、「渉は?」と尋ねられる。
一瞬店長との関係を聞かれたのかと思ったけど、違うと思い直してから答えた。
「ううん。特にない。見ても持ち合わせないから買えないし」
あたしの答えを聞いたモモはそれ以上何も言わなくて、出入り口のある2階まで来てしまう。
その間考えていたことは、自分がしくじったんじゃないかってことばかり。
「モモ……ッ」
出入り口付近で立ち止まるとモモは少し驚いてから足を止めて、何?と目で訴えてくる。
「あの、ほんとに何か買いたかったなら、もっかいちゃんと見たほうがよくない? 付き合うよ?」
あたしが余計なことを言ったから店長にからかわれて、モモはいたたまれなくなって買い物ができなかったのかもしれない。
いや、どっちかっていうと店長のせいだと思いたいけど。
あたしでさえ恥ずかしかったんだから、モモはもっと恥ずかしかったと思うんだよね! あたしの10倍くらい!
「や、買い物じゃない」
「……は?」
あ、見たかっただけ? いや、だから、全然見て回れなかったじゃん。
そう口にできなかったのは、モモが何かを言い辛そうにしていたからだった。
今は何が理由か分からないけど、あたしと目を合わせてすぐに視線を逸らす時のモモはいつだって、気恥しさを隠そうとしてる場合が多いんだ。