それでも君と、はじめての恋を
「彼女がいることは話して連れてく約束もしたのに、付き合った経緯は話してないの?」
「あー……」
言葉を濁すモモはきっと、ウンと言ったら何でと聞かれることを分かってるのかもしれない。
チラリと頬を緩めるあたしを見たモモは首裏を押さえながら、ポツリと呟く。
「……恥ずかしくない?」
ああもう、ほら。予測不能。きっとそんなことだろうと思っていたのに、素直に言われたら言われたで胸の奥に熱がこもる。
あたしみたいに惚気てしまえばいいのに、恥ずかしくて話せないって何ソレもう聞いてるこっちが恥ずかしい。
「あたし、話せるよ」
「……俺は無理」
「……でも店長あんなだし、何回も聞かれたでしょ」
「まあ……」
そのたび黙るのも大変だったろうなと思いながら、一度速まってしまった鼓動はなかなか落ち着いてくれなくて、深く息を吸った。
「次は……言う」
「……」
吐き出すはずの息が止まってそのままモモを見上げると、気付いた瞳が面映さを漂わせていた。
思いっきりしかめっ面なのに、どこか照れくささを含むモモの表情は、あたしの心拍数ばかり上げていく。
次は、言うって。
何をそんなに頑張ることがあるんだろう。モモが言わなくたって、あたしが言えばいいだけの話なのに。
なんなら出逢い編からバレンタイン編までノンストップで語ったっていいくらいなのに。
――どうしてこんなにドキドキするんだろう。何でいつまで経ってもときめくんだろう。
好きで好きでしょうがないなんて、最初っからなのに。こんなんじゃあたし……。
「モモのせいで早死にしそう」
「え」
「寿命が縮んでる気がする」
ギュッと胸の真ん中を服の上から押さえると、反応に困ってるのが伝わってきた。見上げれば、モモはピクリと微かに肩を跳ねさせて何か言おうとしてる。
今日のモモ、頑張るなぁ……なんてずっとドキドキする胸に思考を麻痺させていると、緊張した面持ちでモモは言った。