それでも君と、はじめての恋を
「電車あるかな」
そう言うとモモは改札口の向こうにある電光掲示板を見上げながら、「あと10分後くらい」と告げた。
「じゃあそれに乗ろっか」
改札口に向かい、切符を通してホームへ向かう。
帰宅ラッシュのせいかホームは人で溢れていて、座れるか座れないか微妙なところだなと思っていると、隣に立つモモが眼鏡を外した。
何気なく見ているとモモは目と目の間を指で押してから、遠くを見るように目を細める。
「あれ、その眼鏡って度入ってるの?」
黒縁の眼鏡を指差すと、モモは否定した。
「疲れただけ」
度が入ってないことを確認させるように、あたしへレンズを覗かせるモモの手から眼鏡を奪う。
「あたし似合わないんだよね、この形」
雑誌でモデルがよく掛けていて可愛いなとは思ってるんだけど、あたしにはどうやら似合わないらしくて買ったことがない。
「ほら、変でしょ」
かけてみせると、モモは首を傾けてすぐに目を見開いた。
「ちっさ……」
「は?」
零れるように言葉を発したモモに聞き直せば、不思議そうに瞳を細められてドキリと鼓動が脈打つ。
「顔。小さい」
「えっ! そう!? メンズものだからそう見えるのかな……っ」
パッとフレームの両端を押さえると、モモは「驚いた」なんて言いながら表情を無に戻した。
「……モモのほうが小顔だよ。待ち合わせした時に思ったもん。ズルイ」
「……」
あ、反応に困ってる。ズルイって言われても……って顔だ。
「はは! 嬉しくない?」
「……男だし」
首裏を押さえて向かい側のホームを眺めるモモはやっぱりかっこいい。