それでも君と、はじめての恋を
「大丈夫! モモは苗木を持つ係だから見てて!」
はりきった笑顔を見せてから先程とは全く違うスピードで穴を掘ると、葵がクスクスと笑う。
「早すぎ。誰かさんと違って偉い、偉い」
「任せて! 純はあとで殴ろう」
「なに何、俺の話~っ?」
しゃがみ込むモモの両肩に手を置いて現れた純は、へらりと笑って「進んでる~?」とサボっていたことに何の悪びれも見せない。
言葉を発する前にモモの肩に手をついてさえくれれば、背負い投げられる確率100%だったのに。
チッと舌打ちしたいのをなんとか堪えると、純はどっかりとモモと葵の間に座り込んだ。
「俺がモテるね~って話?」
「サボってんなチャラ男って話だよ」
「だって捕まっちゃってさぁ。解放してくれないんだからしょうがないじゃ~ん」
「サラッとかわしてこい」
葵の言葉もなんのその。純は相変わらずの間延びした声で「え~」とか言えば許されると思ってる。
「ま、顔だけの桃井とは違うからねぇ」
オイ何言ってくれてんだバカ純。
危うくスコップを投げ付けそうになると、モモが純に視線を向けた。
それに気付いた純は可愛こぶってこれでもかとばかりに首を傾げるけど、数秒して視線を逸らすのは純のほう。
「あんま見つめないでよ怖いからぁ~」
「怖くないっ!」
「怖いじゃ~ん! なんだよ、無言で見つめるなよっ」
あたしの否定を更に否定した純は何を勘違いしてるのか、自分を守るように両腕を胸の前で交差してみせた。気持ち悪い。
モモはモモでまだ純を見つめていて、それは何か疑問を持ってたりする時の仕草だとあたしは知っていた。