それでも君と、はじめての恋を
「ご飯は? 炊けた?」
「あ、うん。さっきちょうど泡噴いてた」
「焦げてないでしょうね」
「ちゃんと言われた通りにしましたーっ」
料理があまり上手くないあたしと純は必然的にお米を炊く役目にしてもらったから、失敗は許されないのだけど多分大丈夫だと思う。
「葵の方こそちゃんと出来たの?」
なんて言ってはみるものの、葵がそれなりに料理上手だということは中学の時から知っていた。
「あたし野菜切っただけだし。あとは全部桃井の責任」
「……え、でもちゃんと出来てたでしょ……?」
「んー」
チラリと数メートル離れた場所にいるモモを見た葵は「まあ大丈夫でしょ」と、かなり適当。
というか、そんなことよりも別の話があるといった感じであたしに視線を戻した葵の目が楽しげだった。
……あれ、何かコレさっきも体感した気が……。
「桃井って結構さ、渉のこと見てんの。知ってた?」
「え!?」
「何かちょくちょくどっか見てるなーと思ったら、その先に絶対渉いんだもん。こっちがニヤけたわ」
マジでか……!
密かに頬を染めると、葵は満足そうに笑って「まあ、」と付け足す。
「桃井は無表情だったけどね。どっちかっていうと、睨んでる感じに見えるからウケた」
「失礼だな! いいよ別に! 嬉しいよ!」
笑う葵にむつけながらも、あたしのテンションは地味に高まっていた。
すると皿を拭き終えた葵はスプーンの水滴も布巾で拭って、なぜか差し出てくる。
「味見してきて。あたし甘過ぎるの嫌だから」
「――っしてくる!」
パッと顔を明るくしたあたしはスプーンを受け取って、今度こそモモの元へ一直線。
「モモッ!」
呼べば必ずピクリと反応を見せてから、振り向くモモが好き。
「渉」
確認するようにあたしの名前を呼んでくれるモモは、もっと好き。