それでも君と、はじめての恋を
「この部屋は何だ? 女子が6人いるはずだったけど、俺の勘違いか? ええ? オイ」
ほんの1分前までモモとふたりきりだったはずの部屋は急に騒がしくなって、正直頭が追い付いていなかった。
「……お前らいい度胸してるじゃねぇの。こんな時間に部屋でふたりイチャコラチュッチュですか、ん?」
ふたりに距離はあるものの、隣り合うあたしとモモの目の前に立って見下ろしてくる安部ちゃんの迫力はなかなかのもの。
「他の奴らはどこ行った! どーせ男女一緒にいんだろ!? 今すぐ連れてこい!」
「あ~ダメダメ、青春を謳歌中だからぁ~」
もはや立ち上がることもなく畳の上に寝転ぶ純は、めんどくさそうに右手を左右に振った。
「ふざけんなー!」と怒る安部ちゃんを純があしらってる間に部屋へ入ってきた葵が、苦笑を浮かべながら近付いて来る。
「ゴメン渉、邪魔して」
「いやいや……え、ていうか何で葵と純が……え?」
「あーうん、まあ。廊下にいたよね」
「いたよね、じゃないんですけど!?」
どういうことなのコレは!
「は~あ、ホント安部ちゃんって余計なことしかしないよね。い~いところだったのにさぁ……ね~桃井っ」
「余計って何だ余計って! いいところって何してたんだ桃井!」
もちろん完全無視のモモの背中を見ながら、あたしは何で純と葵が廊下でコソコソ隠れていたのかを考えていた。
「せぇ~っかくふたりっきりにしてあげたのにさぁ、何で俺が言った通りに出来な……っ!」
ボスンッと純の顔面にヒットした座布団は、モモが勢い良く投げ付けたせい。
「……」
「……」
「……オイ、何だこの空気。教師を巻き込むな」
「安部ちゃんが邪魔したせいでしょ~。俺まで桃井に怒られたじゃん」
せっかくふたりっきりに……? 何で言った通りに、って……え? いやいやまさか。
え?
「デート止まりなのが純と森にバレて、純がけしかけただけの話」
そう言いながら隣に座った葵に、やっぱりなと思う。