それでも君と、はじめての恋を
*
「「渉いらっしゃーい!」」
声高に笑いながら迎えてくれるのは、髪色が明るかったり指定のネクタイやワイシャツではなかったり、校章を付けていない同級生たち。
アクセサリーが煌めく両手に、あたしは弱々しくハイタッチした。
「あーあ……もう、居残りさせられる意味が分からないよ」
不満を口にしながら床に座り込むと、「説教も毎回同じだもんねー」と軽い返事が返される。
4限目のロングホームルームを使った学年集会の終盤、抜き打ちで服装検査なんかされたらたまったもんじゃない。
1組から順に生活指導と学年主任の検査を受けて、あたしは見事に引っ掛かったわけだけど……。
「わー! また葵クリアしてる! ずるい!」
難なく通された葵はピースしてから、ヒラヒラと手を振って先に教室へ戻って行ってしまう。
それよりもあのモモすら合格だったからね。
ちょっと、「あー……もう少し髪色どうにかならないかなー」とか言われたくらいで終わったからね。
「何で毎回毎回あたし達ばっかり!」
「ウチらに比べたら他は可愛いもんだってことでしょ」
なるほど。なんて納得はしてみても、服装検査なのに赤点組ばっかり残されてる気がするのは気のせいじゃないと思う。
「はーあ」
時たま溜め息を吐きつつ、友達と会話しながら服装検査が終わるのを待った。
その後は定型文化した生活指導のお説教。10分も短くなった昼休みは、校則を守らない生徒への罰でしかなかった。
「あ、待って渉!」
教室に戻ろうと進めた足を止めると、同じく検査に引っ掛かっていた別のクラスの友達が隣に現われる。
学年で5本の指に入る、可愛くて人気のある子だった。