それでも君と、はじめての恋を


「何、ちょっと……喧嘩!? その顔殴られたんでしょ!」

「べぇ~つぅ~にぃ~」


モモの腕からヒョイと缶コーヒーとカフェオレを取り上げた純は、さっさと階段を上っていく。


「純!ってああ飲み物買いに来たのにっ!」


右往左往していると、ひとり落ち着いていたモモが口を開いた。


「お茶でいいなら」

「えぇ……もらう。ありがとう」


ていうか残ってるのコーラだけだし、もしかしなくても純に奢らせられたのね……。


階段を上るモモに続きながら、純とは自販機の前で会ったのかなと考える。


「ねえモモ。純いつ来たの?」

「自販機行く前にばったり会った」


さっきのあたしとモモみたいに?


「痣のこと何か聞いた?」

「……勲章?」

「そういうことじゃなくて!」


ああでも、言いそう。男の勲章とか言って誤魔化すんだ、純って奴は。


はーっと大きな溜め息を吐くと、モモは「絡まれたとか何とか」と曖昧な情報を付け足した。


……どう考えても、彼氏持ちの女の子に手を出した結果としか思えないんですけど。


「もー……ほんとビックリした。あんな純見たの、高一の春以来」


教室に戻るとすぐに、葵の前に立つ純の背中が目に入った。どうやら怒られてるみたい。


「何でもないってばぁ~! カフェオレあげたんだから怒るの禁止!」

「それとこれとはっ……桃井の奢りで何が禁止だバカ!」


あたしとモモの姿を見つけた葵は気付いたのか、純の足を蹴飛ばした。


「イッタァ!」と声を荒らげる純の声と同時にモモからお茶を受け取って、ふたりのところへ向かう。


「絡まれたんだって?」

「は? 純が?」

「……桃井~」


ジロリと純に睨まれたモモは怯むことはなくても、少し複雑そうな表情をしていた。
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