それでも君と、はじめての恋を
「……色々あるでしょ」
「人間だもんね」
きっとあたしひとりじゃ大して役には立たないだろうけど、葵や純に何かあったなら声をかける自分でいたい。
モモと付き合う前も、付き合ったあとも、葵と純がいて良かったと思うように。
あたしもふたりの助けになるときがあれば、少しでも気持ちを楽にしてあげられたらと思う。
「そういえば今日、何かやっとモモと喋れた気がする」
もぐもぐと順調にお弁当を食べ進めていたあたしは最後のご飯を飲み込んで、お茶を喉に流し込む。
「……そう?」
「そうだよ」
まあ元々無口なあなたですけども。
「……勉強してんの?」
話題のチョイス! よりによってその話!?
「してないけど、するよ! 赤点は取らないっ」
「……」
ホントかよ……って顔に書いてあるんですけど?
ていうか例え今月末の試験で赤点取っても、夏休み前に補習があるからあんまり関係ないんだなーコレが。
……なんて言ったらモモだけじゃなく葵にも呆れられるから言わないけど。夏休み潰れないなら赤点取ってもオッケー!なんて絶対言いません。
「大体モモだってたまに授業中寝るじゃん。今日だって寝てた」
自分だけ心配されるのは癪で言ってはみるものの、頭の良いモモには関係ない話だ。
モモは午前中を振り返るように眉を寄せて、チラリとあたしの背後を見てから呟いた。
「見るなよ……」
盗み見てたのバレたっぽい。
チャイムと、純と葵が戻ってきたことであたしは笑顔で誤魔化し、懲りずに5限目も6限目も窓に映るモモを盗み見た。
言わずもがな、モモとは4~5回目が合ってしまったけれど。
窓に映る呆れ顔と笑顔だけのやりとりは、秘密っぽくていいかも、なんて思った雨垂れ続くある日の午後。