それでも君と、はじめての恋を


「うち来る?」

「…………」


うち来る? 今、うち来るって言った?


「――え!? 何で!? いや、行きたいけど!」


突然の誘いに驚いたのはあたしだけではなく、葵と純も同じだったみたい。目が点だ。


「練習台で良ければ」

「は……え? 練習台?」

「リタッチも頼めばしてくれる」

「……」

「……」


困惑するあたしとは正反対に無表情だったモモが、暫くすると戸惑いを滲ませた。


「……言ってなかった?」

「いや、何の話をしてるのかサッパリ……」


顎に手を添えたモモはあたしを見てぽつり、


「俺んち美容院」


衝撃の事実を口にする。


「マァジでぇ!? なんっだよ早く言えよっ! 俺今月美容院行ったのにぃ~!」

「はー……どうりで髪色落ちないわけだ」


驚いて悔しがる純と感心する葵がいても、あたしはポカーンと口を開けたまま。


「……言ってるもんだと」

「思ってたの!? 一度も聞いたことないよ初耳だよ!」


どんだけ無口っていうかホント聞かないと喋らないな! ていうか知らなかったのも結構ショックなんだけど……!


ジト……と睨めば、モモは案の定そろりと目を逸らす。


家が、美容院て……3週間に1度髪を染め直してるって言ってたのは、そのせいか。何でその時家が美容院だからって付け足さないかな!


「モモあたしの家がどんなのか知ってる?」

「……商社マンとパート」


そうですよ普通の一般家庭ですよ。
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