それでも君と、はじめての恋を

▽ぴったり



試験も無事に終わってあとは夏休みを待つだけの日々。だけどその前にビックイベントが到来。


7月14日、土曜日。天気はくもり。モモと付き合って5ヵ月記念日の今日、初めての彼氏宅訪問!


――なのに。


「よろしくお願いしまーす」

「……」


綺麗なお姉さんが手渡してきた広告入りのポケットティッシュを片手に、あたしはポツンとひとり駅前で立ちつくしていた。


モモが住んでる場所はいわゆる副都心のひとつで、商業施設やオフィスビル、住宅やマンションが密集していて大型のショッピングセンターもある。


区役所や警察署、プロのサッカーチームが試合する専用スタジアムなんかもあって、あたしが住んでる住宅街とは似ても似つかない。


そんなことより、迎えに来るはずのモモが来ないんですけど……?


携帯で時刻を確認すると午前10時42分。待ち合わせ時間から10分以上経ってる。2回電話したけど、出ない。


このまま待っててもいいのに、今日だけは、待てない理由があった。


11時からモモの美容院に予約を入れてる。


6月はピンチだったけど、今月ならお金に余裕があったから結局お願いすることになったんだ。


ど、どうしよう……。


キョロキョロと辺りを見渡しても、モモらしき人の姿は見えない。


もっかい電話!


発信ボタンを押して耳に当てながら、先程目に入った時間に焦りが募った。


10時45分……駅から徒歩で10分も掛からないって言ってたけど、遅刻するわけにもいかないし……美容院の場所は分かってるし……。


「~っもう!」


途切れないコールにバチンッと携帯を閉じて、それを合図に大きく一歩踏み出した。


真っ直ぐ前を見るあたしが辿り着く場所に、激しく緊張しながら。
< 339 / 490 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop