それでも君と、はじめての恋を
慌てて鏡をカバンに突っ込んで立ちあがる。
湧き上がる好奇心を抑えながら、走る電車なんてお構いなしに小走りで桃井くんに近付いた。
もうすぐ、停車駅だということを忘れて。
「桃井く……わっ!」
突然速度を落とした電車のせいで、小走りしていたあたしはバランスを崩した。
―――ゴンッ!
「……」
「……」
……消えたい。
桃井くんに声を掛けるより先に転んだら恥ずかしいと、近くにあったポールへとっさに手を伸ばしたけれど、無意味に終わった。
「……大丈夫?」
いいえ全然これっぽちも大丈夫じゃないです!!
遠心力が掛かって額をドアに強打したあたしは、桃井くんに声を掛けられても恥ずかしさのあまり叫びたくなる。
穴があったら入りたい。それか今すぐ自分のカバンを頭からかぶりたい。逆に怪しいけど。
赤くなった顔を少しでも落ち着かせるためにゆっくり振り向くと、桃井くんはジッとあたしを見ていた。