それでも君と、はじめての恋を
「っねえ! 離してって、……っ!」
モモの腕を振り払おうとすると、膝裏がソファーの肘かけにぶつかってバランスを崩した。
一瞬で視界が反転した自分に影が出来ていたのは、ほんの十数センチ離れた場所でモモがあたしに覆い被さっていたから。
何をやってるんだとでも言いたげな顔を認識した瞬間、ドクンと大きく波打った脈に赤色が顔まではい上がる。
「――っごめん!!」
「――!」
ゴッと鈍い音と同時に痛みが額へ走り、あたしは勢い良く起き上がらせたはずの体をまたソファーへ沈めた。
「イ、イッタ……!」
そう言いながらも目線はモモの姿を探して、見つけた途端に飛び起きる。
「ご、ごめん! あたし石頭だから……っ大丈夫!?」
床に座り込んで額を押さえるモモの顔は見えないけど、きっとかなり痛かったと思う。
その証拠に顔を上げたモモは顔を歪ませて、前髪の隙間から見えた額は少し赤かった。
「ひとりで焦りすぎ……」
「うっ」と情けない声を出すと、もう平気なのかモモは手を伸ばしてあたしの額を確認してくる。
さらりと揺れた前髪にひやりと冷たいモモの手は、またあの夜と被ってしまった。
……そりゃ、自分でもテンパりすぎだと分かってたけど。
「あたしだって、されたい」
モモの手が離れたのを感じながら、モモの目も見れずに呟いた。
「や、だから……」
「それとこれとは別だって分かってるけどっ」
「……」
きっとモモから見ればあたしは駄々をこねてる子供だ。
でも本当に思うんだもん。
あたしだってモモにキスされたいって思う。
してくれないことに怒ってるわけでも、されないことが悲しいわけでもない。
今すぐにしてほしいわけでもないし、急かすように自分からしようとも思ってない。
ただ単純に、とても自然に、モモにキスされたい、って。モモとキスしたいって思ってるだけなんだよ。