それでも君と、はじめての恋を
「~っもう! あたしが変態みたいじゃんっ!」
近くにあった赤いクッションを掴んでモモへ叩き付けると、あたしの理不尽な行為は無言で受け止められた。
顔面に叩きつけられたっていうのに、クッションから顔を覗かせたモモは困ったように笑う。
分からない。もしかしたら、あたしをなだめるように微笑んだのかもしれない。
だってそんな顔を見せられたら、次の言葉なんて出てこなかった。
「……」
おずおずとクッションを引き寄せて両脚と一緒に胸に抱くと、モモは立ち上がってそのままあたしの隣へ腰掛ける。
僅かに沈んだソファーにきゅっと唇を結んで、右隣に感じるモモの気配に喉の奥が苦しくなった。
……モモの部屋、秒針の音がしない。
代わりに外から微かな車の走行音や、人の話声は聞こえるけれど。
ていうかあたし、帰るつもりでモモの部屋に鞄を取りに来ただけなのに……何やってるんだろ。
「ごめん。今日、色々」
「……」
「失敗した」
言葉の意味が分からなくて恐る恐る右へ視線を向けると、モモは片足をソファーにのせて、肘かけについた手で顔を支えていた。
目は、合わない。
「朝まで部屋の片づけするんじゃなかった」
「……」
「二度寝しなきゃよかった」
「……」
「家で待ってないで店の手伝いしとくんだった」
「モ、モモ? あの……」
「渉に湊を寝かしつけてもらえばよかった」
ポツポツと言い続けたモモがやっとあたしを見て、閉じた唇を再び開く。
「全然一緒にいられなかった」
「――……」
「今日の失敗談」
フイと顔を逸らして立ちあがったモモの姿や表情はもうそこにはないのに、あたしは横を向いたまま身動きが取れずにいた。
まるで残像が残ってるみたいに、ひたすらモモの瞳を見つめて、言葉を反芻して。
込み上げた何かとても熱いものが指の先まで拡がると、あたしの目はやっとモモの実体を捉える。