それでも君と、はじめての恋を
「学校の最寄り駅から2駅先に出来たレストランだよ」
「そうだっけぇ?」
この前話したばっかりなのにもう忘れてるのか。
「ま、合格おめでと~。遊びに行くねっ」
ニコッと可愛らしい笑顔を見せる純に来なくていいと思っていると、今ベランダに来た葵が代わりに言ってくれた。
「アンタが来たら追い出すから」
「ね、制服可愛い? メイドっぽいと嬉しいなぁ~」
「客とか店員ナンパしたらブッ飛ばすからね」
「大丈夫、大丈夫。葵にも声かけるから~」
もうすでに純を無視する葵はあたしの隣にしゃがみ込む。
「七尋くんと連絡ついた?」
「うん、メールでおめでとうって。渉にも頑張ってねだって」
微笑む葵に笑い返して、やっぱり七尋くんはいい彼氏だなぁなんて思いながら、そういえば暫く顔を見てないことに気付いた。
「七尋くんご飯食べに来てくれるといーねっ」
「ヤダよ、恥ずかしい」
「でも葵は七尋くんのバイト先に行くじゃん」
「それとこれとは別でしょ」
そうかなぁ。あたしだったら、モモに来てほしい……いや、バイトどころじゃなくなるかもしれない。
「桃井は? バイト頑張ってる渉の姿、見に来る?」
首を伸ばしてあたしの隣に座るモモに尋ねる葵はどことなく楽しそう。からかってるだけか。
そう思いながらも気になって返答を待つと、モモはあたしを見て何か想像してるのかもしれない。
「見に、っていうか……1回くらいは普通に、行くけど……」
「だぁ~よねぇ~! その時は俺も行くからっ」
「アンタは来なくていいっての」
「葵がつれな~い。俺もいたほうがいいよね。ね、桃井。助かるっしょ?」
「……どっちでも……」
「良くないから。桃井、純のこと絶対連れてこないでよ」
葵と純に板挟みにされて困ってるモモに笑っていると、「みんなー」と森くんが教室の窓から顔を出した。