それでも君と、はじめての恋を
「久坂さんひとりで女子高生と何してんの。ナンパ? ナンパっすか?」
「アホ。お前じゃあるまいし」
「久坂さん彼女と別れたばっかなんだよー」
「バッカ! やめろよっ」
反応に困らなかったのは、ヨッシーも久坂さんも至って普通に笑い合ってるからだった。
なんか、学校みたい。
そう感じたのは間違いではなかったようで、大学1年生の久坂さんと1個上のヨッシーとはすぐに打ち解けて、スタッフルームは笑い声で満たされる。
「ところでライブって好き? 俺バンド組んでるんだけど、良かったら見に来てよっ」
「お前の方がよっぽどナンパじゃねーか!」
「まあね」とアッサリ認めるヨッシーに笑っていると、久坂さんが「気にしなくていいから」と手を左右に振った。
「いやー。ちょっと諸事情で女の子の入り増やしたいんだよねー」
「ああ、例の?」
ふたりの会話を聞きながら、行ったことのないライブハウスを想像する。
……あ、ダメだな。
モモ、音楽には疎いみたいだし。デートした時にCDショップはサラッと見ただけだったからなぁ。
まあ機会があったら行ってみることにして。キッチンにホールと受け持つ場所は違うけれど、バイトは楽しくなりそうと思っているとヨッシーが「ところでさぁ」と話題を変えた。
「おふたりさんは彼氏いるのー?」
「いますよ」
ヨッシーの問いにすぐ返事をした葵に、あたしも同じように答える。
「ちょっと久坂さん今見た? 渉ちゃん超ーニヤけたよ」
「えっ!? ニヤけました!?」
焦って両頬を包むと、久坂さんは声を出して笑った。
「彼氏いるって言うだけでその顔……! ハハッ! いいな、相当好きなんだ?」
「う……まあ、ハイ」
恥ずかしいけど否定は出来ないというか……したところで葵に鼻で笑われるというか。