それでも君と、はじめての恋を


「けほっ」


咳き込むふりをして、口元を押さえる。


自分でも分かるほどに、顔がニヤけてると思ったから。


……桃井くんの笑った顔、もっと見たかったな。


本当に少し。見間違いかと思うほどに一瞬だったけど、確かに笑った。


笑った顔なんて、他に見た人いないんじゃない?


2千円の代わりにあげたお菓子で桃井くんと仲良くなりたいと思って、とんでもなく貴重なものを逆に貰ってしまった気がする。


あの笑顔は、反則だ。


「げほっ……んんっ」


ああ、やばい、ほら。

めっちゃニヤけちゃうじゃん。

咳払いじゃ誤魔化しきれない。



誰も知らない桃井くんを知りたい。


誰も近付かない桃井くんに近付きたい。


もっと、もっと。今よりもっと。



この生まれたばかりの感情を、人はなんて呼ぶんだろう。


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