それでも君と、はじめての恋を
「お、お弁当を……作ってみました」
見れば分かるのに改めて口に出すと、とんでもなく恥ずかしい。
「あ~。だから一昨日と昨日、指に絆創膏してたんだぁ」
「うっさいバカ!!」
今日はしてない! 包丁の扱いに慣れてなかっただけで、若干生傷は残ってるけど、大した怪我じゃなかった!
「まさか久坂さんに言われたことを即実践するなんて……」
「ぎゃー! やめて葵のバカ! 確かにそうだけどっ」
きっと喜ぶんじゃない? なんて言われたら実践しないわけにはいかなかっただけデス!
「愛だね」
ポン、とあたしの肩を叩いた葵は微笑んでから、立ち上がる。
「純、帰るよ」
「え~……。――ま、いっかぁ。愛妻弁当どんな味だったか今度教えてね、も~もいっ!」
モモの肩を叩いた純はニヤニヤと笑って、「また夏休みにね~!」と手を上げて葵と帰って行った。
残されたあたしはと言うと、固まってるのか無反応のモモを見る他ない。
「あの、えと……モモみたいにうまくはないんだけどっ! 作ってみた!」
「……」
「……えっと、味の保証は一応、兄からオッケーをもらったから大丈夫だと思う!」
「……」
どこまで無反応を続ける気!?
ああ、どうしよう。他に何か言うことあったかな……ていうか中身を見てもらった方が早いと思うんだけど……。
「あの、モモ? め、迷惑だった……?」
ずっと差し出しっぱなしだったお弁当を引っ込めると、モモはハッとしたように「や、全然」と言葉を発した。
だけどまた口を閉じて、それ以上何かを言うこともない。
迷惑じゃないなら、良かったけど……。
自分の膝に置いた弁当からチラリと盗み見るように視線を上げた。
「じゃあ、その、食べてくれる……?」
おずおずと小さな声で聞くとモモはあたしを見て、目を逸らして、両手で顔を覆い隠す。
「あー……うん」
そう言ったモモは黒板側に体を向けたままで、机についた両肘から上は見事なまでにモモの正面を隠していた。
……いないいない、ばぁ~。なんてモモがするわけないね。
「……食べる」
とりあえず顔を見せてくれたら嬉しいんだけど、自分で気付いてないのかな。