それでも君と、はじめての恋を
「耳まで赤いよ」
瞬間、耳を隠したモモだけど顔が丸見えになったことに気付いたのか、ズルズルと頭を下げて机に突っ伏してしまった。
……予想以上の反応、かも。
あたしは椅子から降りて床にしゃがみ込み、コン、と音を立ててお弁当をモモの机に置いた。
すると重ねた両腕に顔を埋めていたモモが、ほんの少しだけ顔を見せてくれる。
「嬉しい?」
「……嬉しい」
「あたしも嬉しい」
そんなに赤くなるほど喜んでもらえて。すごく、すごく、嬉しい。
机の端につかまって、必死にモモと目線を合わせるあたしはきっと頬が緩んでる。
だってモモが、指先であたしの前髪をよけて、見つめてくるから。
目つきの悪いモモの瞳は、あたしにとって檻みたい。視線が絡むと、逸らしたくないと思う。ずっと見ていたいって思う。
だけど多くはいつも、モモから逸らしてしまうから。今のこの状況は本当に嬉しくて、ニヤけちゃうんだ。
「早く食べないと腐っちゃうよ」
「……悪くなる、の間違い」
そう言いながらもピンク色のランチマットに包まれたお弁当を掴んだモモは、やっと体を起こして立ち上がった。
「ベランダで食べる」
言葉通りにベランダへ向かうモモの後ろについて行きながら、別にいいけれど「何で?」と問い掛けてみる。
「暑い」
……それはただ体温が高くなってるからじゃない? なんて、言わないけど。
確かに今日はいい天気で風もあるし、青天の下でご飯を食べるのも悪くない。
ベランダに出るとモモは少し歩いて、地べたにあぐらを掻いた。その隣に腰掛けたあたしは両脚を伸ばして、壁にもたれ掛かる。
決して広くはないベランダで、背の高いモモが足を伸ばすのは無理そう。
「……」
そわそわした気持ちで空を見上げていると、隣からカチャカチャと箸を取り出す音が聞こえる。
ちらりと新品の弁当箱を見ると、骨ばった大きな手が今まさに蓋を開けた。
二段重ねのお弁当箱の上段は、俵型に握ったおにぎりが3つ。
「……左がたまごのふりかけで、真ん中はただの白米で、右が青菜としらすの混ぜ込みごはん」
俵型だから、幅5ミリくらいに切った海苔を真ん中に巻き付けてみました。