それでも君と、はじめての恋を


「ああ、割り箸に巻いてあるやつ? お好み焼きみたいなやつだよね」

「渉は」

「んー……たこ焼きかやきとり。あ! あれも食べたいっ」


遠くに見えたじゃがバターの文字に反応すると、モモは少し目を見開いてから、可笑しそうに細めた。


「全部?」

「……胃の限界までは頑張ろうかと」


可笑しいなら笑えばいいのに、そしたらあたしは怒るのに、優しい視線を向けられると食い気ばかりな自分が恥ずかしい。


「とりあえずモモの買いに……」

「――っ湊!」

――え? あ!


「待って湊ちゃんっ!」


突然駆け出した湊ちゃんの姿を視界に捉えると、反射的にモモの二の腕を叩いた。


慌ててふたり揃って追いかけるけど、小さい湊ちゃんはスルスルと人混みの隙間を掻き分けていってしまう。


嘘でしょちょっと! 速っ!


「湊ちゃんっ!」


完全に見失ってしまったあたしとモモは足を止めて、呼び掛けに戻ってこないかと暫く辺りを見回したけれど、戻ってくる気配は一向になかった。


すると大きな溜め息が頭上から聞こえて、見上げれば湊ちゃんが走った先を睨むモモの姿があった。


な、なかなかの迫力デスネ……。


「ごめん……」

「え!? あたしの方こそごめん! 注意して見てなくてっ」

「や、多分こうなるとは……思ってた」

「そうなの?」


湊ちゃんが駆け出した時は焦っていたモモだけど、どうやらこんな状況には慣れてるのか呆れ顔になっていた。


「ひとりでどっか行くなって言っても、聞かない」

「でも探さないと。湊ちゃんってひとりでも戻ってくるの?」

「……迷子にならなければ」


そ、それは……どうなの? 出店はほとんど直線状に並んでるし、迷子にはならなそうだけど……この人混みじゃ心配しない方が無理でしょ?
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