それでも君と、はじめての恋を
「ショッピングモールとかだと、自分で迷子ですって誰かに言うんだけど」
すごいというか偉いというか……とりあえず迷子になったらどうすればいいかは分かってる、と。
「事務局みたいなテントはあったよね。迷子になったらそこにいるとして、とりあえず先歩こう。湊ちゃんいるかもしれないから」
「うん」
買いたかった食べ物の出店も無視して、あたしとモモは真っ直ぐ湊ちゃんが走って行った道を慎重に見て歩いた。
けれど最奥に来ても湊ちゃんの姿はなく、更に心配が募ってきてしまった。
「二手に別れよう……!」
そう提案するとモモは申し訳なさそうに眉を下げたけれど、やっぱり心配の方がはるかに大きいのか素直に頷く。
「俺、事務局? 行ってみる」
「分かった! じゃあ、あたし来た道戻るから、見つかったら電話ちょうだい!」
会話もそこそこに、あたしとモモは二手に分かれて湊ちゃんを探しに行った。
ああ、もう。本当にどこに行ったんだろう。ていうか何を求めて走って行っちゃったんだろう。
「湊ちゃーんっ」
通り過ぎる人、出店の前で立ち止まる人を注意深く確認しながら、元来た道を戻る。
こんな時ばかり、下駄を履いてるのがつらい。浴衣のせいで歩幅も大きくできず、人混みのせいで思うように前へ進めない。
「どこ行ったの……!」
まだ小学生で幼いし、あれだけ可愛いんだから、誰かが声を掛けてるかもしれない。
迷子ですって誰かに言ってればいいんだけど……どうか変なおじさんにつかまってませんように。
「――!」
ちょうど湊ちゃんとはぐれた辺りまで戻って来た時、ほんの2メートル先を何かが横切った。
それはよく見ると大きなテディベアで、誰かが肩車をしているのか、どんな人よりも目立つそれに目を奪われた。
テディベアは出店と出店の隙間を横切り、すぐに消えてしまったけれど。
「……」
そっか。ずっと出店の前ばかり歩いてたから気付かなかったけど、店の裏にも……。
探すだけ探してみようと道から外れて、クレープとかき氷の店の間を通り抜ける。
想像通り出店は大鳥居から神門前までしか続いておらず、出店の裏は授与所や社務所などがあるだけで、人もまばらだった。
砂利石を踏み、歩き出そうとした瞬間。
――いた!!
目に飛び込んできたのは先程のテディベアと、それに触れる探していた後ろ姿。