それでも君と、はじめての恋を
「あ、モモッ! ごめんっ見つかった!」
駆け寄ってきたモモは息を切らしてあたしの隣で立ち止まると、湊ちゃんを見下ろしながら大きな溜め息をついた。
「ほんと……何して……」
明らかに怒っているモモに若干冷や汗をかくも、サッとあたしの後ろに隠れた湊ちゃんをフォローしなければ、という思いに駆られる。
「もうあたしが怒ったから! ね! 落ち着いて! 何か、そのテディベア追いかけたみたいで……! でも今ちゃんと、ごめんなさいとありがとうしたもんね? ね、湊ちゃん!」
「した……。おにぃちゃん、ごめんなさい」
あたしの足に掴まって、ビクビクしながらモモを見上げる湊ちゃん。
そんな妹にお兄ちゃんはほだされ……ないの? 無表情すぎて分からないよ?
あたしまでハラハラしていると、モモは湊ちゃんから視線を外して黙っていた4人の男女に向き直った。
「妹がすいません。何か、迷惑かけたりとか……」
「いやいや、ハハッ! ふ、すいません。彼女さんと同じこと聞くから」
ケラケラと笑うのは凪さんで、モモは面食らったのか口を噤む。
「迷惑なんて全く。むしろもう少し一緒にいたいくらい可愛い子で、あたし達も楽しかったから。怒らないであげてよ」
「つか、謝ってんだからいいじゃん? んなコエー顔して怒んなって。なぁ? 湊」
いい人達だ……! それに凪さんといい祠稀くんといい、モモにビビらないのが凄い!
感心しているとモモがあたしに視線を移して、大丈夫だよという意味を込めて微笑む。するとモモは再び4人へ目を向けて頭を下げた。
「ありがとう御座いました」
「あ、ありがとうございましたっ」
湊ちゃんも真似してぺこりと頭を下げると、「いいえー」と明るい声が耳に響く。
「……バイバイ」
「――ばいばいっ!」
テディベアを持っていた彗くんがそのふわふわとした腕を操って手を振ると、湊ちゃんは嬉しそうに手を振り返した。
あたしとモモはもう一度4人に頭を下げ、湊ちゃんと手を繋いで歩き出す。