それでも君と、はじめての恋を


「いいなー。彼氏とその妹と彼女で夏祭りって、すっごい仲良しな感じだよね」

「俺らじゃ不満って言ってんのか? 上等だコラ」


そんな会話が背後から耳に入って、仲良く見えるのかと照れくさくなってしまった。


――とりあえず一件落着、かな。


薄暗い場所から再び出店が並ぶ通りに入り、賑やかな雰囲気にやっと胸を撫で下ろすと、急にお腹が空腹を訴える。


「あーっお腹空いた! 何か食べようよ」

「……だね」

「おにいちゃん、イカ焼き食べたいっ」


渋いな。さすが米好きなだけある……って、あれ?


「湊ちゃん、わたあめは?」


駆けだした時は、確かまだ持っていたはずだけど……もう食べたのかな。


「さっきの、髪長いほうのおにぃちゃんに食べられたよ?」

「「……」」


いや、まあ、迷惑かけたんだし……わたあめくらい、ね。


「あとね、あとねっ! シャテキしたいのっ」


ご飯を買いに足を進めると、湊ちゃんには似合わなそうな言葉が出てきた。


「射的? 何でまた」

「さっきのクマさん、それで取ったって教えてくれた!」


ああ、なるほど。あれだけ大きかったら狙い放題な気がするけど、どこにあるんだろう。


「じゃあご飯食べたら探してみよっか。きっとお兄ちゃんが好きなもの何でも取ってくれるよ」

「ほんと!? やったぁ」


「え」というモモの声は聞こえていたけど、あたしはハードルを上げるだけ上げて、湊ちゃんに微笑み返すだけだった。



その後はそれぞれ食べたいものを買って、普段いつでも食べられるものばかりなのに、どうしてこんなに美味しく感じるんだろうと思いながらお腹を満たした。


時たま写真を取りながら夏祭りの思い出を刻むあたしはきっと、終始笑顔だったと思う。
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