それでも君と、はじめての恋を
*
「っあー! 惜しい! 惜しくない!? 何で当たらないかなっ!」
「渉ちゃんも終わり……?」
夜6時を過ぎた頃、最終的な目的であった射的を見つけたあたし達は大はしゃぎ。
想像していたものとは違ったけれど、ビー玉がいくつか入った野球ボールほどの袋を、番号の書かれた札に当てて倒すだけという単純さは楽しい。
それなのに当たらない。ちっとも当たらない!
「残念だったなぁ。もっかいやるか?」
500円で3回投げられる権利を既に2度使い果たしたあたしに、厳ついおじさんがニヤリと口の端を上げた。
湊ちゃんも1度やったけれど当たらず、オマケでもう3回投げさせてもらっても当たらなかったという結果。
「いやぁ……うーん……」
センスないっていうか、また500円出したところで当たりそうにないっていうか……。おじさん子供にしかオマケで投げさせてくれないし……。
狙っていたのは、湊ちゃんが欲しがった子供用のお洒落セットと、おにぃが好きそうなゲームソフト。
番号が書かれてる木製の札はひな壇のようなものに並んでいて、高額商品ほど狙いにくい場所にある。
ていうか、やっぱこういうのってぼったくりだよね。それでも一度はやりたくなるんだから、祭りって怖い。
「んん~……っモモ頑張って!」
悩んだ結果諦めたあたしは勝手にモモへバトンタッチして、一歩後ろに下がった。
「……やるんか?」
「……」
無言で500円玉を差し出したモモにおじさんはボールを3つ手渡し、様子を眺める。
黙っていたモモは何を狙ってるのかは知らないけれど、とりあえず何番でもいいから当てて倒してほしい。
金魚すくいでダメダメだったモモは、今だけは忘れるから! お願い!
かまえたモモに祈ると、投げられたボールはすぐに5番に当たった。
「やっ……倒れないのかよ!!」
「おにぃちゃん~! がんばって!」
せっかく当たっても倒れなきゃ景品はもらえないから、もどかしさばかり募る。
「あと2投だよー」
おじさんの声に、モモはボールをぽんぽんと手で弄びながら眉を寄せた。