それでも君と、はじめての恋を




「っあー! 惜しい! 惜しくない!? 何で当たらないかなっ!」

「渉ちゃんも終わり……?」


夜6時を過ぎた頃、最終的な目的であった射的を見つけたあたし達は大はしゃぎ。


想像していたものとは違ったけれど、ビー玉がいくつか入った野球ボールほどの袋を、番号の書かれた札に当てて倒すだけという単純さは楽しい。


それなのに当たらない。ちっとも当たらない!


「残念だったなぁ。もっかいやるか?」


500円で3回投げられる権利を既に2度使い果たしたあたしに、厳ついおじさんがニヤリと口の端を上げた。


湊ちゃんも1度やったけれど当たらず、オマケでもう3回投げさせてもらっても当たらなかったという結果。


「いやぁ……うーん……」


センスないっていうか、また500円出したところで当たりそうにないっていうか……。おじさん子供にしかオマケで投げさせてくれないし……。


狙っていたのは、湊ちゃんが欲しがった子供用のお洒落セットと、おにぃが好きそうなゲームソフト。


番号が書かれてる木製の札はひな壇のようなものに並んでいて、高額商品ほど狙いにくい場所にある。


ていうか、やっぱこういうのってぼったくりだよね。それでも一度はやりたくなるんだから、祭りって怖い。


「んん~……っモモ頑張って!」


悩んだ結果諦めたあたしは勝手にモモへバトンタッチして、一歩後ろに下がった。


「……やるんか?」

「……」


無言で500円玉を差し出したモモにおじさんはボールを3つ手渡し、様子を眺める。


黙っていたモモは何を狙ってるのかは知らないけれど、とりあえず何番でもいいから当てて倒してほしい。


金魚すくいでダメダメだったモモは、今だけは忘れるから! お願い!


かまえたモモに祈ると、投げられたボールはすぐに5番に当たった。


「やっ……倒れないのかよ!!」

「おにぃちゃん~! がんばって!」


せっかく当たっても倒れなきゃ景品はもらえないから、もどかしさばかり募る。


「あと2投だよー」


おじさんの声に、モモはボールをぽんぽんと手で弄びながら眉を寄せた。
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