それでも君と、はじめての恋を
――ガンッ!と、音を立ててモモが2投目のボールを当てたのは、狙いにくい場所にあった3番。
投げたボールの速さと大きな音にあたしは驚くだけで、札が倒れていないことに疑問を持つのが遅れた。
え? 今の音で倒れないって、何事?
「……お、おにいさん、凄いねぇ。惜しかったね」
おじさんが急にヘラヘラとした笑顔を見せて、地面に落ちたボールを拾う。
あー……これは、的屋の裏事情が見えちゃった感じ……?
さすがに湊ちゃんがいる前では口に出せないけど、さっきモモが眉を寄せたのはそのせいか。
1から30番まで景品があるけれど、若い数ほど高額商品なんだ。
「……狙ってたの何番?」
「え。あ、14番……」
「倒す」
「……」
眉間に深くシワを刻むモモは強気にそう言って、あたしはぜひお願いしますと心の中で呟いた。
倒れないからくりは分からないけれど、モモが倒すと言うなら信じてみたい。ドキドキしながら、いつの間にか握っていた両手をさらに強く握り締めて、祈った。
当たれ。もう本当に何番でもいいから、倒れて!
モモが投げた最後の1投はヒュッと風を切って、14番がある段に一直線。
――ガァンッ!!と、先程よりも倍大きい音が響き、14番は倒れるどころか後ろへ吹っ飛んでいった。
「――……」
どれだけ思い切り投げたんだろう。
衝撃でひな壇が揺れたのか、15番より下の札までパタ、パタ、と2つ倒れた。
ポカーンとしていたのはあたしだけでなく、湊ちゃんもおじさんも驚いたまま動かない。
するとモモが平然と「倒した」と視線をよこすから、ジワッと何か熱いものが胸の奥で込み上げた。
「――っす、ごい! 凄い凄い! 倒れたよモモッ!」
「やったぁ! おにぃちゃんすごーいっ!」
湊ちゃんがモモに抱き付き、あたしは興奮気味に倒れた番号を確認する。