それでも君と、はじめての恋を
「おじさん! 18番と21番も倒れたけど、景品貰えるよね!?」
「……いや」
「貰えないの?」
おじさんは聞いてるあたしではなく、背後に立つモモをちらちらと見ていた。
それに気付いていながら目を離さないあたしに、おじさんは観念したように両手を上げる。
「ああもう分かった! 持ってけ!」
「やった! ありがとう!」
渋々といった感じだったけれど、おじさんは3つの景品が入った袋をモモに渡してくれて、最後は手を振って見送ってくれた。
「良かったねー、湊ちゃん。欲しかったやつ、お兄ちゃんが取ってくれて」
「うん! おにぃちゃんかっこよかった!」
ご機嫌な湊ちゃんはモモに取ってもらったお洒落セットをかざしながら、喜んでいる。
小さめのヘアブラシや髪留め、鏡なんかが入ってるものは、あたしも小さい頃欲しがったような記憶があった。
「いやー……でもほんと良かったね。最後、ほぼ強奪だったけど」
「……3と5番奪わなかっただけマシ」
「倒れないのおかしいでしょ!って突っ込んでたら、貰えたかなぁ」
「かもね」
まあ、あたしはモモの勇士を見れたような気がするから、それだけで十分なんだけどさ。
夜7時を前にして、9時半に終了する祭りは盛り上がるばかり。
既に満足して神社を後にするあたし達は、同じく帰る人達の流れに沿って歩いていた。
「渉」
「ん? ……何それ、さっきの景品?」
モモが差し出してきたのは、薄っぺらい袋に入ったパワーストーンのように見えるブレスレット。丸いプラスチックのビーズはベビーピンクとクリアが交互に並んでいた。
「くれるの?」
あたしよりも湊ちゃんにあげたほうがいいんじゃないかな、と思うけれど。
「欲しければ」
なんて、ぶっきらぼうに言われてしまうと欲しくなる。
……思い出の品がまたひとつ、増えた。
「じゃあ、貰う。ありがとうっ」
ブレスレットを巾着の中にしまいながら、そういえばと思い出す。