それでも君と、はじめての恋を
「……、……ん?」
駅が目の前まで見えた時、パタ、と耳に届いた音は雨。それは次の瞬間――ザァッ!と音を立てて激しく地に降り注いだ。
「うお!」
「やだぁ! 何急にっ!」
前にいたカップルが慌てて駆けだして、周りにいた人達も騒ぎだす。
「わわっ! やばいモモ!」
「走ろ」
一瞬で勢いを増す突然の豪雨に、モモとあたしも急いで駅構内を目指して走った。
「~っなん、なの……! にわか雨!?」
「……かな」
あたし達以外にも続々と駅構内に駆け込んでくる人達。雨が降り始めて2分も経っていないはずなのに、すでに皆びしょ濡れだった。
ああ、すごい晴れてたのに……最後の最後で何で雨なんか降るんだろう。
「起きたか、ごめん」
モモの声に顔を上げると、湊ちゃんがモモの首に顔を埋めて「うー……」と眠そうな声を出した。
「濡れちゃったね」
巾着からミニタオルを取り出して、湊ちゃんの髪や浴衣をぽんぽんと軽く叩いてから、濡れていたモモの腕も拭う。
「……ありがと」
「ううん。にしても、ほんとに凄いね」
打ち付けるような雨は未だ止むことはせず、電車に乗っても雨足が衰えることはなかった。
「――明日登校日だよね。行く?」
混んでる電車の中で隣合いながら尋ねると、モモは「行く」と返答する。
「……バイト?」
「ううん。バイトは入れてないんだけど、中間提出の宿題が……やっぱモモは終わってるのか……」
「終わった」
さすが過ぎて次の言葉が出ないよね。
あたしなんて夏休みが終わっても提出しないのが当たり前なんですけど……。
揺れる電車の窓から外の景色を眺めて、溜め息。同時にアナウンスが流れて、暫くするとモモが降りる駅に到着した。
「じゃあ」
「うん。また明日ね」
眠る湊ちゃんの頬を撫でて、電車から降りたモモに手を振る。
最後の最後で雨が降ったけれど、モモと湊ちゃんを誘って良かった。
「楽しかった」
そう先に口にしたのはモモで、あたしが目を見張るとプシューッと音を立ててドアが閉まろうとする。
「――っまたね!」
「……またね」
閉まったドア越しに目を丸くさせたあたしとモモはきっと、ハモッたことにお互い気付いていた。だからすぐに、笑い合ったんだと思う。
楽しかった。
また、遊びに行きたいから。次、逢える日を楽しみにしてるから。
――またね、モモ。