それでも君と、はじめての恋を

「さあ……いつから？って聞いて、半年前からってことしか聞いてない。……やっぱ、近くの方がいいんじゃない？　約束なんてしなくても逢える距離にいる子のほうが、良かったんだよ」

「それは……葵の解釈でしょ？」

「だって、そうじゃん。逢えるはずだったのに……七尋はあたしとの約束蹴ってでも、別の女と遊ぶの選んだんだから。そういうことじゃないの？」

「でも………」


葵の言葉をぐるぐると反芻しながら、自分の考えが纏まらないかと頑張ってはみても、頭の中は散らかる一方。


半年前から浮気してたなら、間が差したと言うには期間が長すぎる。理由が分からない。逆に、浮気した理由なんてないのかもしれない。


葵とは違う女の子を選んだ理由が、ない？　あるでしょ？　ないの？


何となく、浮気したの？　逢えないわけじゃなかったのに？　葵との約束を破ってでも、別の女の子と遊ぶ理由は何？


「――……」


ああ、嫌だ。

こんなことを葵は考えているんだ。


葵よりも、浮気相手と遊ぶほうが楽しいから？とか。もう葵のことは好きじゃないの？とか。仮にそうだとして、気持ちが離れたのは何で？　いつから？


疑問ばかり増えて、まるで出口がない迷路に迷い込んだみたい。


こんなことを、七尋くんが葵に与えた。


「……どうするの？　葵は、どうしたいの？　このままでいいとは思ってないでしょ？」

「……」

「ねえ、」

「――知らないよっ！」

「……葵」


零れるように名前を呼ぶと、葵は僅かに顔を上げてあたしと目を合わせた。


その瞳に浮かぶうずたかい涙は、今にも溢れ出しそうで。瞬きをしただけで流れ落ちた雫は、葵に眉を寄せさせた。


「……知らない。そんなの、分かんない。許さないし……逢いたくもないのに……」

「……」

「……まだ好きなあたしは、バカなの？」