それでも君と、はじめての恋を
――
――――……
「はー……」
ぐしゃりと前髪を掻き上げて、そのまま机に突っ伏した。
眠る前も起きた後も考えたっていうのに、解決策なんて見つからず、気分は重くなるばかり。
「……」
別れなよと言うのは簡単で。だけどそんなのは、浮気なんかする男は嫌いだというあたしの感じ方と、そんな男と葵が付き合ってるなんて嫌だという勝手な意見。
別れを提案しないのは、かろうじてそれを理解してる自分がいて、今はまだ葵の気持ちを優先したいから。
七尋くんをけなすことだって簡単。最低だと、最悪だと、いくらでもなじることが出来る。
それに葵がのってくれたらいいんだ。ほんとだよね、そうだよねって言ってくれるなら。
それで少しでも気が晴れるなら、あたしは何時間でも何日でも付き合うのに、そんなことを葵は言わない。
意味が分からないって、許せない、逢いたくないって言いながら、何で? どうすればいいの?って泣くんだ。七尋くんを好きな気持ちが、消えたわけじゃないから。
「おっはよ~ん!」
――ああ、うるさいのが来た。
「桃井おはよ~って、何あれ。どしたの、渉」
「……元気ないっぽい」
……バレてるしね。
「わったるぅ! どしたの~? こんな中途半端に巻いてきちゃって」
特に反応せずに突っ伏したままでいたあたしの髪を、純がひとつまみしてくる。
のそりと体を起こして睨むように見上げれば、能天気な純の笑顔に溜め息しか出なかった。
「なんでもないよ」
「ていうか葵は~?」
聞いといてなんなの!
「休みっ」
「休み? ……もしかしてぇ、葵と喧嘩したぁ?」
プッと笑ってあたしを指差す純の手をはたき落して、「あっち行け!」と怒った。