それでも君と、はじめての恋を




「――え? 逢うことになったの!? いつ!?」

『うん……まだ日にちは決まってないけど、今週中には』


あれから1週間。夏休みも残り2週間を切った夜、葵から七尋くんと逢う約束をしたと電話で報告を受けていた。


『とりあえず、だけどね。七尋も1回逢ってくれってずっと言ってたし……』

「そっかぁ……」


七尋くん、反省してるのかな。葵と逢ったら、何を言うんだろう。


「……大丈夫?」


色々考えたら心配になって、少しの不安が胸を掠めて、大丈夫なわけがないのに口にしてしまった。


『んー。どうかな。ずっと声も聞きたくないって思ってたじゃん? でも今日、何か、ふと電話に出ちゃったら、いつの間にか逢うことになってて……あんま会話の内容覚えてないや』

「……声聞いたら、きゅんとした?」

『するか。渉でもあるまいし』


笑いながら否定した葵だけど、話したかったんだろうなと思う。


『まあ、でも。あー七尋の声だなー……とかは思ったよ』


声が聞きたくて、話がしたくて。口ではいくら否定出来ても、ふと電話に出てしまうほど。もしかしたら、強がって電話に出たのかもしれないけれど。七尋くんの声だ、って、懐かしむほどに求めていたんだと思う。


「……逢ったらさ、どうする? まず、何する?」

『挨拶?』

「……」

『嘘、冗談だって。聞きたいことは全部聞くつもり。何で浮気したのかってこととか……あたしのこと好きじゃないのか、ってこととか?』


語尾を上げておどけたように言う葵の声は少し、震えていた。


……緊張、してるよね。きっとあたしが思ってるよりずっとずっと、不安だよね。


「なんかさ、聞くの、怖いかもしれないけどさ……遠慮とかしないで、聞きたいことは突っ込みなよ」

『遠慮なんかしないって。……大丈夫だよ』


さっきはどうかなって言ったくせに。


電話越しの葵の表情が目に浮かぶようで、自然と眉が下がってしまう。
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