それでも君と、はじめての恋を
*
「――え? 逢うことになったの!? いつ!?」
『うん……まだ日にちは決まってないけど、今週中には』
あれから1週間。夏休みも残り2週間を切った夜、葵から七尋くんと逢う約束をしたと電話で報告を受けていた。
『とりあえず、だけどね。七尋も1回逢ってくれってずっと言ってたし……』
「そっかぁ……」
七尋くん、反省してるのかな。葵と逢ったら、何を言うんだろう。
「……大丈夫?」
色々考えたら心配になって、少しの不安が胸を掠めて、大丈夫なわけがないのに口にしてしまった。
『んー。どうかな。ずっと声も聞きたくないって思ってたじゃん? でも今日、何か、ふと電話に出ちゃったら、いつの間にか逢うことになってて……あんま会話の内容覚えてないや』
「……声聞いたら、きゅんとした?」
『するか。渉でもあるまいし』
笑いながら否定した葵だけど、話したかったんだろうなと思う。
『まあ、でも。あー七尋の声だなー……とかは思ったよ』
声が聞きたくて、話がしたくて。口ではいくら否定出来ても、ふと電話に出てしまうほど。もしかしたら、強がって電話に出たのかもしれないけれど。七尋くんの声だ、って、懐かしむほどに求めていたんだと思う。
「……逢ったらさ、どうする? まず、何する?」
『挨拶?』
「……」
『嘘、冗談だって。聞きたいことは全部聞くつもり。何で浮気したのかってこととか……あたしのこと好きじゃないのか、ってこととか?』
語尾を上げておどけたように言う葵の声は少し、震えていた。
……緊張、してるよね。きっとあたしが思ってるよりずっとずっと、不安だよね。
「なんかさ、聞くの、怖いかもしれないけどさ……遠慮とかしないで、聞きたいことは突っ込みなよ」
『遠慮なんかしないって。……大丈夫だよ』
さっきはどうかなって言ったくせに。
電話越しの葵の表情が目に浮かぶようで、自然と眉が下がってしまう。