それでも君と、はじめての恋を


『……まだ怒ってんの』

さっき言い掛けた言葉はこれだろうな、と冷静に思った。


どこか呆れたような声音は、理解できないと言われたのと同じようなもので。どうして分からないんだろうと思った。


「何で怒ってるのか分からないって言ってるの?」

『……まあ、そう』

「じゃあ言うけど、何でモモと純が今更葵のこと気にするの?」

『……何でって』

「七尋くんが浮気してたこと知ってたのに、黙ってたじゃん。それって結局どうでもいいってことじゃないの? ふたりの問題ってモモは言ったけど、干渉しないで傍観してるって言ってるようなものじゃん」


違うの? 違うなら、それなりの理由を言ってほしい。


だけどモモは黙るだけで、あろうことか溜め息までついた。


『それだけ?』

「――っそ、れだけって何!? あたし何か間違ったこと言ってるっ?」


冗談じゃない。間違ってることを言ってるつもりはない。間違ってると言うなら、何でそう思うのかを言ってほしい。何を言われても納得出来る保証はないけれど。


『渉がそう思うなら、それでいい』

「は!? 違うじゃん! 普通なんで黙ってたのか言うでしょっ」

『そうするべきだと思ったから』

「~っだ、から……!」


一体あたしは何を話してると思ってるの。


なんで黙ってるべきだと思ったのかって聞いてるのに、意味が分からない!


グッと携帯を握り締める力が増して、無理やり怒りを押さえ込む。


「どうでもよかったってことなんだね」

『……渉がそう思うなら』

「あたしがどうこうじゃなくて、モモはどう思ってたのかって聞いてんの!」

『……干渉しようとは思わなかった』

「――……」


ほら、やっぱり。そうじゃないかと思ってたんだ。

思ってたのに何でか、ショックだった。そんなものはすぐに、黒い感情で埋もれてしまったけれど。
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